映画保存の対象は、商業目的で製作された作品に限るべきではありません。ホームムービーは、家族にとってかけがえのない瞬間の個人的な記録であるだけでなく、歴史的・文化的な記録としてもかけがえのないものだからです。
たとえば、あのケネディ大統領暗殺の瞬間は、エイブラハム・ザプルーダーという一市民が撮影した8ミリフィルムに記録されていました。また画家フリーダ・カーロとディエゴ・リベラの写った見事な極彩色の映像は、ニコラス・ ムライの16ミリカメラに収められたものです。もしそれらの貴重なフィルムが存在しなかったら、私たちの歴史の見方はどんなに違っていたことでしょうか。
「ホームムービーの日」はそんなフィルム たちと、それらを撮影した人びとのための記念日です。フィルムに刻みこまれた記憶を大切に受け継いでいくにはどうすればいいのかもっと知りたい。そんな興味をおもちの方はぜひ、お近くの町で開かれるこの祭典に足を運んでみてください。
タチの悪いホームムービーなんて、この世に存在しやしない。ホームムービーには物事の本性を暴く力が宿ってる。だからこそおっかなくもあり、面白くもあるんだ。失敗作も多いけど、時にはそれさえ芸術に姿を変える。ホームムービーは、ちょっとしたアングラ映画なんだ。やつらは世界中の屋根裏やクローゼットの中から「もう一度上映してくれ!」と叫んでる。自分自身を発見したり、家族の思い出をショービジネスにまで昇華したり......ホームムービーの日にはそんなチャンスが溢れてる。だから、いいモノ持ってるなら出し惜しみしないで、さあ、はやくみせてくれ。
■ 欧米にはホームムービーを収集する地域映像アーカイブ、博物館、資料館/史料館などが数多く存在し、そうした活動は年々活発になっています。対象は市井の人々の残した映像であり、有名人の子供時代や歴史的な出来事を記録した映像だけではありません。
■ 今や時代遅れのメディアである映画フィルムは、新しいメディア(例えばDVD)に変換したほうが確かに鑑賞しやすくなります。しかし、未来に向けて保存していくことを考えると、オリジナルのフィルムのほうが実はずっと寿命が長いのです。
■ 米国議会図書館フィルム保存委員会が選定する「ナショナル・フィルム・レジストリー」(映画の有形文化財登録)には、『市民ケーン』『スターウォーズ』『キングコング』などの古典的名作と並んで、ホームムービーも名を連ねています。
マルチプル・シドシス(1970年 9分)